高病原性鳥インフルエンザ(3)

1997年5月、3歳男児(患者1)がH5N1インフルエンザAに罹患し死亡したことを受けて、サーベイランスを強化したところ、11月から現在までで6例と2例の可能性例を検知した(MMWR1997.12.19.pdf)。

患者1.
3歳男児例(先に提示)

患者2.
先天性心奇形のある2歳男児。1997年11月6日、高熱、咳嗽、咽頭痛にて発症。翌日には肺炎を疑われ入院。しかし大きな問題なく軽快し、11月9日退院となる。11月8日に咽頭より採取されたぬぐい液からインフルエンザA (H5N1)を検出した。

患者3.
今まで健康だった13歳女児。1997年11月20日、高熱、咳嗽、咽頭痛にて発症。肺炎のため11月26日に入院。翌日人工呼吸器管理のためICUに移室となる。11月28日に咽頭より採取されたぬぐい液からインフルエンザA (H5N1)を検出した。12月17日の時点で入院中。

患者4.
今まで健康だった54歳男性。1997年11月24日、発熱、咳嗽にて発症。肺炎のため11月29日に入院。12月5日死亡。12月1日に咽頭より採取されたぬぐい液からインフルエンザA (H5N1)を検出した。

患者5.
今まで健康だった24歳女性。1997年12月4日より発熱、咽頭痛、咳嗽、めまいが出現。症状が悪化し、12月7日に入院となる。12月9日ICUに入り人工呼吸管理を受ける。12月17日現在ICU入院中。12月9日、気管より採取した検体からインフルエンザA (H5N1)を検出した。

患者6.
5歳女児。1997年12月7日より発熱、鼻炎、咽頭痛、咳嗽、嘔吐が出現。12月17日現在入院中だが状態は落ち着いている。12月10日、鼻咽腔より採取した検体からインフルエンザA (H5N1)を検出した。

患者7.
2歳男児。1997年12月12日より発熱が出現。状態は悪くなかったが入院。この小児は症例6の従弟で、しばしば症例6の家族宅に遊びに行っていた。12月16日、インフルエンザA (H5N1)陽性。

可能性例1.
今まで健康だった37歳男性。1997年11月17日より発症。24日、肺炎のため入院となる。12月9日軽快退院。12月9日、気管検体採取は成されていないが、血清抗体価検査よりインフルエンザA (H5N1)を検出した。

可能性例2.
3歳男児。患者7の姉であり患者6の姪。1997年12月13日より熱発で発症。13日、状態は悪くなかったが入院。迅速検査でインフルエンザA (H5N1)を検出。現在確認中。

上記患者1~6はお互い接触はない。また共通の暴露源もない。患者6、7、可能性例2は兄弟従弟の関係。

香港のは、1997年3月から5月にかけて3つの養鶏場においてH5N1のアウトブレイクがあり、数千羽が死亡した。6月から10月は落ち着いたが、11月と12月に生きた家禽を扱う市場で再びアウトブレイクが発生し、鳥とその便からウイルスが検出されている。

患者6、7、可能性例2に関して、人から人への感染があったと断定してしまってよいだろうか?他の可能性はないか?

この3人が病気あるいは死んだ鳥と接触した可能性がないか問診などで確認する必要がある。

患者1~7のインフルエンザウイルスの遺伝子を詳しく調査したところ、類似しているが、遺伝子配列は少しずつ異なる部分が散見された。また8つの全てのRNAは鳥インフルエンザ由来であった。このことからどのようなことが推測されるか?

感染源は複数あるであろうこと。鳥インフルエンザが人に直接感染したものである。豚に一端感染し、これが鳥、豚、人の間で再編成をして新種のインフルエンザになったわけではない。

人から人への感染性については今後の調査が必要としても、同時に進めなくてはならないことは何か?

ワクチン開発 ウイルスは既に分離されているので理論上は可能である。
抗ウイルス薬に対する感受性の確認
呼吸器疾患のサーベイランスの強化

1998年1月6日、16人がH5N1高病原性鳥インフルエンザ感染の確定診断を受け、3人が可能性例として診断を進めている。最初の症例は5月に発生した3歳男児例であるが、あとは11月の5例、12月の10例で、可能性のある3人は皆最近の症例である。また、香港以外の地域でこの鳥インフルエンザ発生はなく、香港内でも患者発生は地理的にみて散在している。年齢は1~60歳で、可能性例は3~7歳である。9例は5歳以下。4人は死亡し、3人は危篤状態にある(MMWR1998.1.9)。

このとき、香港政府の保健省はどのような対応をとったと思うか?その理由は?

そこで政府は12月28日、香港にある生きた家禽160万羽を全て殺処分し、近隣エリアからの家禽の仕入れを全て中止した。それ以降新規発生は途絶えた。香港政府は1月からはじまる人のインフルエンザと鳥のインフルエンザの組み換えが起こることを恐れたのである。このように新興感染症は社会経済に大きな影響を与える。

1957年アジア風邪、1968年香港風邪のときには心疾患、肺疾患、腎疾患、アルコール中毒、妊婦など、基礎疾患がある人が重症化する傾向にあった。今回のアウトブレイクではそのような傾向はありそうか?

基本的に健康な人が罹患している。

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