ウエストナイル熱(3)

今回の病気発生に関するウイルスのライフサイクルを検討しようと思う。何を調べるか?

蚊や鳥の数、分布およびウイルスの保有状況を調べる。

カラスやハト、ツバメは都市部に多いが、必ずしもイエカによく刺されるわけではない。アカイエカがよく刺すのはツグミであることがあとから判った。

つぐみ画像

グローバル化に伴い、ヒトやモノが国境を越えて容易に行き来する時代となった。そんな中、WNVはニューヨークで発生したわけである。その後10年かけて北米および南米に広がり、風土病として定着した。1999年から2010年の間に180万人が感染し、36万人が発症し、12,852人が脳炎ないし髄膜炎に罹患し、1,308人が死亡している(Science 2011; 334: 323-327)。特に年配者に対する注意喚起により、屋外活動を減らすなど人々の行動が変わった。

しかし、行動変容できない野鳥に深刻なダメージを与えた。WNVにより数百万羽が死亡し、一部の地域ではある種の鳥(カラス、アメリカコガラ、シジュウカラ、ミソサザイ、ツグミ)が半減したこともある。一部は回復したが、他は減ったままである。

森林を伐採して田畑や牧場に変えるなど自然環境の人為的改変、旅行や移民、その土地にとって新種の動物をペットとして輸入し逃がしてしまう、ものの国境を越えた行き来、二酸化炭素を含む有害ガスの排出、温暖化、降雨量の変化などによるエコシステムの変貌などが、地域のベクターや宿主の分布を変え、そこに新しい病原体が入り込むことにより、その地域に定着し得る。

イエカは都市部に多い。鳥類は都市中心部ではカラスと鳩など、その種類がだいぶ限られる。一方、ツグミはイエカに刺されやすく、郊外の住宅地がヒト、イエカ、ツグミをつなぐ環境となり、今回のアウトブレイクを引き起こした。先進国においては、蚊などの運び屋と人や動物、鳥などの宿主が近接する郊外地域がリスクとなる。このようなエリアは、人工的に造られた箇所が多く存在し、天敵がなく蚊や一定の鳥を含めた動物が増える可能性がある。さらに、1999年以降の調査により、ウイルスは一部の遺伝子変異を起こしてイエカにさらに感染しやすく進化した。

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