炭疽菌(6)

11月12日(月)5時、厳重にテープで巻かれたあやしい手紙を発見した。10月9日トレントン 消印の、ダッシュルへの手紙のような手書きの上院議員のパトリック・レーイにあてられたものだった。送り主はダッシュル の手紙のように小学校であった。中にはかなりの炭疽菌が入っていた。

この手紙は注意深く分離され、科学者の手に渡った。FBIは最初23000の炭疽菌が含まれていた事を公表した。さらに2週後、兵器の専門家は、「議会に送られた炭疽菌は非常に細かい粒子でできており、1グラムあたり1兆個の炭疽菌を含み、1万の炭疽菌吸入が致死量だとすると、1兆個で1億人の催殺量である」発表しなおした。エイムズ株として知られるこの株は、米国防衛研究所など国内のどこかからでたものと推定された。レーイはNBC の番組に出演し、彼に送られた手紙は「10万人を殺すに足る量の炭疽菌が含まれていた」と述べた。
いずれにしても、米国議会を壊滅させることを狙ったテロであったことがはっきりした。このレーイに宛てた手紙がなぜ議会に届かなかったかというと、郵便番号が違っており。届くのが遅れたために封印された状況になったのだ。犯人のわずかな計算ミスが幸いしたのだ。逆に、これが犯人の予定とおりいっていたら、大変なことになっていたであろう。少なくとも、9.11と比較すると、その後の炭疽菌テロは小さく取り上げられることが多い。しかし、実際には9.11と同等以上のインパクトのある出来事だったのではあるまいか?
政府系機関、民間企業、科学者、いずれの立場でも、本事例から学ぶべき点は多い。

トレントンの消印が押される郵便ポストは全部で628ある。FBIはこれをくまなく調べた。なんと627の郵便ポストは全部白だった。彼らも半ばあきらめかけたであろう。しかし、628番目の郵便ポストから炭疽菌が検知されたのだ(FBI Anders DL談話)。FBIはそこから指紋を採取し、炭疽菌を含む郵便物の指紋と一致することを確認し、単独犯と推定。最終的に「2001年9月,米国市民はアメリカ陸軍伝染病医学研究所の1人の職員が生物兵器として入手した」と結論。しかし、この職員は起訴される前に自殺したため、真実は闇の中である。

核兵器の製造は国家単位で行われる。一方、バイオテロは個人でも行い得る。今回の犯人が風の強い日に高層ビルの上から炭疽菌の粉を撒いたりしていれば本当に大変なことになっていたであろう。あれから10年以上経ったが、バイオテロ対策はほとんど進歩していない。

前のページに戻る