炭疽菌(3)

ブッシュ大統領の側近、DOH (国土安全保障省)長官であるトム・リッジと他のスポークスマンはパニックを恐れ穏便な言葉を選びテロを否定した。その裏で国の機関は警戒レベルを最高に上げていたのだった。

あなたが政府危機管理監であるとして、まず議員および関係者の安全を確保したとしよう。

(1) この事件をどのように断定するか?1行で答えよ。

(2) 次にどのような職種が危険であると考えるか?

ヒント:この炭疽菌は非常に細かい粒子(1m)でできていて、簡単に空気中に散布される性質を備えている:まさしく兵器用に開発されたものだ。

(1) メディアや国会議員を狙った郵便物を介しての炭疽菌テロ

(2) 郵便局員

米国郵便サービスはCDCやDOHの職員に「ダッシュル議員のところに届いた郵便は、ニュー・ジャージ、トレントンにあるハミルトン タウンシップからブレントウッドを通過してPストリートの議会用のメール仕分け施設に行き、そしてダークセン上院事務所ビルのメールルーム、続いて上院議員会館ビルに行ったはずである。だから、郵便局内の炭疽菌の検査をしなくてもよいのか?」と何度も尋ねた。あなたはこの場にいたCDC職員である。どう回答するか?ブレントウッドの職員は1800人、そのうち郵便物に直接触れるものは1500人いた。

米国郵便サービス職員の鼻前庭をスワブで検査し、同時にシプロキサンなどの抗生剤予防内服を開始するべきである。

しかし、実際はその正反対であった。CDCもDOHも「郵便局員にはリスクは無いし、炭疽菌の検査をする必要は全く無い」と強調した。「上院議員会館ビル以外は大丈夫」と述べている。その理由について「炭疽菌を含む手紙を開けた人および開けた際近くに居た人がリスクである。他は大丈夫。少なくとも、8千から1万の芽胞を吸い込まなければ吸入炭疽になることはない。さらに炭疽菌は重くものに付着しやすいので、めったに感染症をおこすほど吸い込むことはめったにないだろう。ダッシュルの手紙はテープでしっかりととめられていたので、開けるまでは芽胞が封筒から外にもれ出る心配はない。今まで郵便局員で炭疽菌感染症にかかったものは居ない。そのような理由からCDCは施設内での炭疽菌による汚染のリスクは無い」と言い切ったのである。

米国郵便サービスはCDCの意見を受け入れざるを得なかった。そしてFBI のトップ3人はFox TVの番組で「ダッシュルの手紙から炭疽菌の芽胞が郵便施設内でもれ出る可能性は微塵もない」と多くのメディア関係者を前に記者会見したのだった。実際には最初に使われたものとは違い、粒子も細かく電荷を帯びていたため、粉として舞い上がりやすいように作られていた。FBIは前回の炭疽菌と同じものが使われているという先入観にとらわれており、このような発言になったのだろう。

あなたは米国郵便サービスの常務である。この問題についてCDCの意見はともかくとして、どのような対応をとるか?

10月15日(月)、常務は郵便安全作業部会を発足させることを宣言した。この作業部会は、米国郵便サービスの上層部と労働組合の代表で構成され、郵便システム内にバイオハザードが存在しないかどうか調査することを責務とした。市民に対しては、炭疽菌の疑いのある郵便物を受け取った際の注意点を記載した注意メールを1億3千5百万の家庭に郵送することを決めた。さらに、フロリダ、ニューヨーク、ワシントンの郵便局従業員にマスク、手袋などを供給した。常務は木曜日に米国郵便サービスが独自に委託する形で民間企業に炭疽菌の検査をしてもらうことにした。

上院議員事務所ビルのメールルームで4箇所の培養から炭疽菌が発見された。封筒がダークセンで破れていたのであれば、中の炭疽菌は周辺に漏れ検出されるというのは有り得る話だ。しかし、封筒はテープでしっかり閉じられていた。この郵便が通過した郵便局を調べる必要はないだろうか?

CDCは「全く危険性はない」と言ってはいたが、状況が変わったからCDCにもう一度聞いてみる価値があるだろう。実際には、炭疽菌の粒子は1μm程度であり、電子顕微鏡で観察するとわかる程度の封筒の穴から漏れ出たのだ。

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