核セキュリティサミットと米中首脳会談

 3月31日から4月1日にかけ、米国ワシントンで第4回核セキュリティサミットが開催され、会議に参加するため訪米していた習近平国家主席とオバマ米大統領の間で首脳会談が実施された。会談前に、オバマ大統領は「人権、サイバー、南シナ海の問題についても話し合う」と述べ、米国側の中国に対する不満を覗かせていた。ただし、オバマ政権の狙いは、中国に不満をぶつけるだけでなく、話し合いを維持することにより、これ以上の関係悪化を防ぐという点にもあることに留意すべきである。

 米中は、互いに有する経済利益が大きく、また、万が一軍事的衝突に至るような対立に至った場合には生じる被害が甚大すぎるため、徹底的な関係悪化を避けようとするが、他方で相手への不信を拭いきれず、むしろ相手への不満を強めているというのがこの数年の趨勢である。特にこの1、2年、中国が南シナ海で行っている埋め立てが明らかになってから、米国の対中不信は強まり、米中首脳会談が実施されても、実質的に重要な合意はほとんどなされていない。握手をしながらテーブルの下で蹴り合うような状況が続いている。

 今回、“蹴り合い”の対象となったのは、南シナ海やサイバーセキュリティの問題であったが、特に南シナ海で中国が進めている「軍事化」が問題視された。2015年9月の米中首脳会談で、オバマが南シナ海における中国の行動に対する懸念を示した際、習近平は「中国は南シナ海を軍事化する意図はない」と明言したのである。にもかかわらず、その後も中国は人工埋め立て地への戦闘機やミサイル配備を続け、「習近平のあの言葉は何だったのか。言動が一致していない」という批判が米国で起こっていた。それに対する中国側の反論は「固有の領土に対する防衛施設の配備は“軍事化”ではない」というものだが、もちろん、そのような理屈が中国以外の国で説得力を持つはずもない。米国は「航行の自由」作戦を継続しつつ、3月にはフィリピンと戦略協議を実施して軍事協力の推進を決定し、さらに他の東南アジア諸国や、インド、日本との安全保障協力を推進することで中国をけん制しようとしている。かたや中国側は、そのような米国や同盟国の動きに対し、強烈な不満を抱き、結局、今回も南シナ海問題に対する双方の主張は、並行線をたどったままだった。

 南シナ海での緊張が一向に改善されない中、“握手”、つまり関係安定のための方策として強調されたのは、北朝鮮問題解決のための協力である。1月の核実験に続き、北朝鮮は2月にはミサイル発射実験を行い、挑発的な行動を繰り返している。韓国は、中国が反対している「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備について米国と協議を始め、中国国内においても、北朝鮮に対する不満が強まっている。北朝鮮の核開発が地域情勢を不安定化し、今のままでは事態が悪化していくだけであるという認識は米中ともに共有している。中国は、金正恩政権を追い詰めるほどの制裁に加担する気はないが、多少懲らしめるほどの制裁には同意する姿勢を見せている。双方の主張と利益がまったく相容れない南シナ海に比べ、朝鮮半島には、少なくとも北朝鮮の核保有は認められないという共通の利益がある。米中関係の緩和のためにも、今後、朝鮮半島をめぐる米中の話し合いが進む可能性はある。

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