原油価格の変動要因と2016年の傾向予測

 2014年6月以降、原油価格が下落してきた。その主原因は2014年までの米シェールオイルの増産と2015年のサウジアラビア、イラク、ロシア等の増産による供給過剰、および2015年7月以降の中国経済不安である。なお、米シェール増産は2012年から著しくなっていたが、2014年上期までは経済制裁によるイランの減産とリビアの内紛による減産分と相殺されていた。2015年は核合意前後からイランの生産回復予測が価格下落を招いている。

 日々報道される原油価格は先物市場価格であり、原油自体の需給ではなく先物の売り買い(=将来的な需給)で変動する。しかしその売り買いはさまざまニュースの影響を受け、なかでも石油(現物)需給の情報 が大きく影響する。他には為替変動、消費や雇用等のマクロ経済動向、株価等があり、さらには地政学リスクがある。先物価格なので、石油需給と経済事象は過去の実績以上に将来予想が大きく反映される。

 米ドルは2015年にドルの主要6通貨.DXYに対するドル指数で前年比9%超上昇し、ドル建てである原油価格を引き下げる一要因になった。為替、マクロ経済指標、株価等は相互に影響し、原油価格や石油需給とも影響しあう。特に世界同時株安時においては、原油価格や他の先物商品および株価は連動しやすい。経済事象が根っこの要因として全てに影響するからである。

地政学リスクとは紛争等による供給低下リスクであるが、低価格時(高在庫時、一般に経済不振時)と高価格時(左記の逆)では価格影響力が異なる。供給低下リスクは、低価格時(高在庫時)は影響力が比較的小さくなるし、経済不振時ならリスクによる世界経済への悪影響でむしろ価格下落の可能性もある。昨今のイラン・サウジ間の緊張の高まりはこの事例(と同時にOPEC減産の可能性をさらに低めたと市場に感じさせた事態)である。つまり地政学リスクの価格上昇圧力は、高価格時には強いが低価格時には弱いのである。

 2016年を予想するには、石油需給面での価格低下による石油需要増加と米シェール・加オイルサンドの減産の如何、イラン増産の如何、中国等の備蓄増加が過剰供給を吸収できるか、が最重要である。価格低下により世界的に需要が増加しているのはガソリンなどの軽い製品である。これは軽質原油の需要増をもたらし、米国原油輸出解禁と相まって、米シェールの減産意欲を抑える方向に働くと思われる。直近では暖房油需要に響く北半球の気温も鍵である。

 為替では米金利上げによる影響、株価に関しては中国の経済成長の先行きが最重要である。中国経済は石油需給の予測にも影響する。リスク高揚だけでは価格は短期的に小反発する程度であり、リスクが具体化して供給超過が解消することになって初めて価格は本格的に反発する。

 筆者は2016年の価格を元旦に予想した。レンジは30$/b~$50/bで、同レンジを下回るのは経済危機が発生した場合、上回るのは地政学事象等で実際に供給が低下した場合、という予想であるが、既に一時的だが30$/bを下回った。通年平均では40$/b前後であろう。

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