最近のサウジアラビアにおける治安情勢

 サウジアラビアでは、「イスラーム国」(IS)によるテロへの警戒が強まっている。ISはシーア派を最も優先順位の高い標的と位置づけ、同派の宗教施設を標的としたテロ事件を繰り返してきた。最近半年間に起こった事件としては、昨年10月の東部州カティーフのシーア派宗教施設での銃乱射事件(5人が死亡)、同月の南部のナジュラーンのシーア派モスクでの自爆テロ事件(2人が死亡)、今年1月の東部州アフサーのシーア派モスクでの自爆テロ事件(4人が死亡)がある。少なくともカティーフとナジュラーンの事件ではISが犯行声明を出しており、アフサーの事件の犯人も同組織関係者であった可能性が高い。

 また、サウジ軍の関係者や施設を標的にした、IS関連と見られるテロ事件も最近特に増えている。昨年8月には南部のアブハーのサウジ軍特別緊急展開部隊本部のモスクを標的とした自爆テロが発生し、15人が死亡した。この事件の実行犯は、自爆ベルトの装着法から現場への移動まで、複数のIS関係者の協力を得ていたことが、後の捜査で明らかになった。今年2月には、首都リヤードで軍関係者が所有する車輛の爆破事件(8日)、南部のジャーザ―ンで退役軍人殺害事件(15日)、中央部のカシームで軍人殺害事件(26日)が相次いで発生している。リヤードの事件では親ISのアァマーク通信がISの犯行であると報じ、ジャーザーンの事件ではISが公式に犯行声明を出し、カシームの事件もISに忠誠を誓う者が攻撃を実行した。

 こうした事態を受け、サウジ内務省は同組織とその共鳴者に対する取り締まりを強化している。アブハーの事件に関しては9人、カシームの事件に関しては6人、容疑者として内務省が顔写真や氏名を公開した。いずれの事件も、容疑者に関する情報を提供した者とテロ事件を阻止する情報を提供した者には、それぞれ100万リヤル(複数人の場合は500万リヤル)と700万リヤルの懸賞金を支給すると発表した。その後、カシームの事件の容疑者6人は、治安部隊の銃撃によって殺害された。

 シーア派信徒が集住する東部州のカティーフでは、彼らによる反体制的な動きとそれを取締る当局との衝突が激化している。今年1月にサウジ内務省がシーア派法学者ニムルの処刑を発表すると、同市のアワーミーヤ地区で治安警察と何者かの間で小規模な銃撃戦が発生した。同地区の農場では、既に昨年10月に多数のマシンガンを含む武器が押収されていた。ニムルの処刑発表から40日目にあたる2月にも、カティーフで彼を追悼するデモが発生した。サウジ当局はカティーフに軍用車両を巡回させ、こうした行動の警戒にあたっている。このように、シーア派信徒が集住する地区では、不測の事態に警戒する必要がある。

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