危機管理の基本:ケース ハンブルグ③

 次に感染源の調査を行った。まず41のクラスターを同定。あるクラスターを引き起こした配膳会社の供給元をトレースバックすると生産者Aに行き当たった。さらに生産者Aからトレースフォワードされる卸業はドイツ16州のうち7州に分布しており、それぞれが何らかのクラスターとリンクしている。

 Aは国の規則に則り頻繁に衛生面の検査を行っていたが従業員にインタビューを行ったところ、5月中に15人の従業員中5人が病気になったりO104が陽性になったりしていたという。従業員はしばしば会社内のスプラウトを食べていたようである。コロハかレンズマメのスプラウトが可能性として浮かび上がった。

図

黄色:生産者A、黒:卸業、赤:クラスター

◆問題
  本アウトブレイク調査では、生産者Aが持っていたスプラウトから病原性大腸菌を検出できず、決定的な証拠は得られなかった。しかしスプラウトが原因であったいくつかのエビデンスがある。それを列挙せよ。

◆回答
・レストランKの調査で、スプラウトを食べなかった人は誰も病気になっていない
・他の食材で有意なものはなかった
・41のクラスターやケースが生産者Aあるいはその卸業とリンクした
・生産者Aのスプラウトを食べた従業員が病気になった

◆問題
 病原性大腸菌犠牲者および遺族が生産者Aに対して訴訟を起こしたとする。原告が勝訴する見込みはどうだろうか?今後このようなことが起こらないようにするためにはどうしたらよいと思うか?

◆回答
 疫学的には生産者Aが原因である可能性が極めて高い。しかし、生産者Aのスプラウトから病原性大腸菌を検出できていない。また、生産者Aは国の規則に則り頻繁に衛生面の検査を行っていた。疫学的証拠はあっても法的証拠が無く、生産者Aに落ち度が無いとすると勝訴するのは難しい。

 重要なことは、今後このようなことが起こらないようなシステムを構築することである。関係者は訴訟されないという前提で証拠品の提出やコメントをだしてもらう。飛行機の事故調査委員会の手法だ。1996年7月7日と8日、大阪堺市で小学校の給食が原因で32,551人の児童がこれを食べ、12,680人が発症し、121人がHUSに至り、3人の少女が死亡した(Ped Int 1996; 41: 213-7)。裁判にはなったが、システムは変わっていない。

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