危機管理の基本:ケース ハンブルグ②

 次にレストラン・コホート研究を行った。ルーベックにあるレストランKに的を絞った。

 5月12日から16日、この店を訪れた人を予約表から割り出し、メニューを見せながら、どの注文をしたかインタビューを行った。更にそのレストランのシェフに個々のメニューに使われた素材と量、仕入れ業者をたずねた。また正確を期すため店のレシートと照合もした。

 

集団

人数

下痢

血清下痢

ベロ毒素陽性

HUS

患者/ 評価可能人数

(発症率%)

1

37

10

9

10

4

9/34 (26)

2

2

1

1

2

0

1/2 (50)

3

31

11

4

5

1

5/25 (20)

4

10

2

0

1

0

1/9 (11)

5

9

1

1

2

0

1/9 (11)

6

19

1

1

1

0

1/17 (6)

7

10

0

0

0

0

0/9 (0)

8

14

3

3

4

1

3/14 (21)

9

25

9

9

6

1

9/25 (36)

10

11

3

1

2

1

1/8 (13)

合計

168

41

29

33

8

31/152 (20)

 

5月12日から16日で10の集団からなる177人を同定し、168人からインタビューを行い、152人が病気を発症したか否か判定可能。そのうち31人(20%)がケースに当てはまった。中でもHUSを合併したのは8人(26%)であった。

◆問題
結果を下記に示す。どう分析するか?

 

 

食べた人中の発症者(%)a

食べなかった人中の発症者(%)b

リスク比a/b

(95%信頼区間)

p値

スプラウト

31/115 (27)

0/37 (0)

14.2 (2.55-∞)

0.001

トマト

14/50 (28)

17/102 (17)

1.68 (0.77-3.62)

0.18

キュウリ

14/50 (28)

17/102 (17)

1.68 (0.77-3.62)

0.18

ハクサイ

13/45 (29)

18/107 (17)

1.72 (0.77-3.71)

0.17

赤チコリー

13/45 (29)

18/107 (17)

1.72 (0.77-3.71)

0.17

レタス

13/45 (29)

18/107 (17)

1.72 (0.77-3.71)

0.17

◆回答
 スプラウトを食べた115人中病気発症は31人であったのに対して、食べなかった37人からは病気発症はゼロである。リスク比は14.23でありp値も0.001と統計学的に有意。これが決定打となり、スプラウトが原因と結論できる。

 このレストランで生のスプラウトが料理の”つま”あるいはサイドサラダなど様々なメニューに使われていた。このサイドサラダには赤チコリー、ハクサイ、レタス、キュウリ、トマト、そしてスプラウトが使われていたのである。色の鮮やかな食材であれば記憶に残るであろうが、地味なものだと記憶には残りにくい。このレストラン・コホートではその点をうまく回避している。この結果がもっと早期に判っていれば、患者および死者はもっと少なかったであろうに。

 この時期、このレストランは近くの配膳業者からスプラウトを仕入れていた。このレストランではスプラウトを含むディッシュが884人の客に出された。発症率が27%とすると、239人が出血性腸炎になったと想定される。

 

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