ニパ脳炎(4)

オーストラリアではハンドラ・ウイルスによるウマのアウトブレイクが東海岸沿いに1994~2010年の間に合計14回発生し、44頭のウマと調教師4人を死に至らしめている。最近数年でヘンドラ・アウトブレイク数は徐々に増加していたが、2011年は急増といっても過言でないくらい増えている。

ヘンドラ・アウトブレイクの数

アウトブレイクを増やした要因は何だろうか?

ウイルス変異:RNAウイルスで変異はし続けているが、2011年特別な変異をもつ亜型が増えたわけではないので、この可能性は低いだろう。

洪水:ブリスベンを含むクイーンズでは、2010年夏に大洪水があった。

これによりオオコウモリの食べ物が不足して、人里にコウモリが出没するようになった可能性がある。

自然宿主とはウイルスは宿すが自分は病気にならない動物等である。この自然宿主を探さなくてはならない。何故ならブタも病気になるので、ブタは自然宿主ではない。自然宿主を見つけ出し、これからブタがどうやって感染したかをつきとめないと、今回アウトブレイクが収まったとしても、再び悪夢をみるかもしれない。どのような調査をするべきか?

最初の患者を突き止める:ニパ村のアウトブレイクより前にマレーシア北部にあるイポーという地域でアウトブレイクがあったようである。あとからわかったことだが、まだブタが感染源ということが判っておらず、日本脳炎が原因と思われていたころ、イポーで養豚場を営む家庭で夫と子供を亡くした妻が、お金が必要になり豚を安値でニパ村に売り払った。このようなケースはいくつもあったようである。ニパ村はイポーより養豚が盛んであったため、特にひどいアウトブレイクとなってしまったのだ。

アウトブレイクの発生場所

調査チームはイポーを訪れた。ニパ・ウイルスはヘンドラ・ウイルスに近縁であることから、イポーのオオコウモリを調べることになった。高い場所に網を張り、オオコウモリを捕獲した。そして血液、唾液、尿を採取したのである。その結果、300匹のコウモリのうち20匹でニパ・ウイルスに対する抗体を検出したのだ。

それではどうやってコウモリからブタに感染したのか?イポーでは、養豚業者は果樹園も同時に営んでいることが多かった。最初の患者が発生した農家では果樹園と豚舎が隣接していた。そして地元のコウモリが農家の果実を夜間食べていることが確認された。オオコウモリはこれを食べ、その唾液がついた果物が下に落ち、一部は豚舎にもころがりおち、それを食べたブタが発症したと推定される。

このアウトブレイクはマレーシアのヒステリックなまでの封じ込め対策で一応の終息をみた。

その後バングラディッシュやインドにおいてニパ脳炎のアウトブレイクを数回にわたってみている。マレーシアではオオコウモリ→豚→人の感染経路であったが、2001年以降にみられた感染はヒトからヒトに感染するものであった。1998年のニパとは同じ系統であるが、遺伝子の変化がみられ、このことがヒトからヒトへの感染を可能にしたと思われる。

ハンタ、ニパ・ウイルスを媒介するオオコウモリの生息域を示す。アウトブレイクもほぼその範囲と一致する。

前のページに戻る