英国、原発建設計画の承認を延期 計画推進を働きかける中国

 8月1日、英国で新しく誕生したメイ政権は、中国製の原子炉導入計画の承認を延期・再検討すると発表し、黄金時代と言われた英中関係に暗雲が漂い始めている。この計画は昨年(2015年)10月に習近平国家主席が訪英した際に合意され、中国は先進国において初めて原子炉建設を受注したケースとして大いに力を入れていた。

 英国のEU脱退を阻止できず辞任したキャメロン元首相は、2013年から英中接近外交へと大々的に舵を切り、中国との関係強化を進めてきた。それより以前、2010年にキャメロン首相が中国のチベット政策を批判すると、その問題について中国を批判したのは英国だけではなかったにもかかわらず、中国は見せしめのように英国に対する冷遇政策をとった。中国との経済的利益の魅力に抗えなかった英国は、一転して中英関係の改善と強化に力を入れるようになった。

 2013年、100名以上のビジネスパーソンを引き連れて訪中したキャメロン首相は、「チベットの独立を支持しない」と明言し、公式文書には残っていないものの、中国の官製メディアは「キャメロン首相が『中国の核心的利益と重大な関心事項を尊重する』と表明したことを評価する」と報じた。2015年3月、中国が設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、G7の中で先陣を切って参加を表明した。同年10月に習近平訪英の際には、エリザベス女王との謁見やパレード、バッキンガム宮殿での滞在など、前例のない特別待遇で習近平を迎え入れ、その際、英国に建設計画予定の原子力発電所に、中国製の原子炉を導入することを合意した。対外的なインフラ輸出に力を入れている中国にとって、先進国の原発建設への参画は、大きな実績となるはずであった。

 キャメロン首相の後を継いで、7月に新しく首相となったテリーザ・メイ氏は、就任してすぐに、安全保障上の懸念があるという理由で、中国製原子炉計画の見直しを発表した。慌てたのは中国だけではなく、ともに資金調達と建設を担当することになっていたフランスも同様だが、初めての先進国での原子炉建設として力を入れていた中国にとっては、より一層大きな打撃であった。中国の劉暁明駐英大使は、英国政府に抗議するとともに、フィナンシャル・タイムズ紙に文章を寄稿し、「中英関係は重大な歴史的局面にある」として、計画の承認と遂行を求めた。

 原子炉計画の承認についての最終決定は、秋にされる予定となっている。キャメロン政権の対中政策には批判的であったといわれるメイ首相だが、原発計画を白紙に戻せば、中国側の強い反発は必至である。EU離脱による懸念を払しょくしようとしているメイ政権にとって、中英関係の冷却化により、経済的損失が生じるのは何としても避けたいところである。安全保障の優先か、中英関係(経済利益)の優先か、メイ政権は難しい選択を迫られている。

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