「“改善の兆しも依然として互いへの不信”日中外相会談」

  4月末、岸田外相は北京を訪問し、王毅外相と会談した。国際会議以外で、日本の外相が中国を訪問したのは約4年半ぶりである。尖閣問題をめぐり、日中関係は一時「戦後最悪」と言われるほど悪化したが、近年は徐々に緊張緩和の動きが現れつつあり、「爆買い」という言葉が生まれるほど、中国人観光客の来日者数も増えている。

 他方、東シナ海や南シナ海をめぐる日中間の軋轢は継続しており、安全保障上の懸念は解消されていない。3月の全人代で、李克強首相は日中関係について「改善の勢いはあるが、まだ強固ではなく脆弱」と述べた。外相会談で、王毅外相は日中関係を「改善の兆しも出ているが、依然として互いへの不信が存在する」と評し、3月の李首相の表現より表現がやや後退した。

 外相会談における王毅外相の態度は、まったく非友好的であった。岸田外相との記念写真に憮然とした表情で映り、さらに、「日本が誠意を示すなら中国は歓迎する」として、日中関係悪化の原因はすべて日本にあるという態度で臨んだと、中国メディアは報じた。もちろん、このような非礼に対する日本側の評判がいいはずもなく、中国は関係改善を望んでいないのではないかと思わされるほどであった。しかし実際には、会談時間は昼食をはさんで4時間以上に及び、また、岸田外相と会談した李克強首相は、王毅外相より穏健な姿勢で、日中関係の改善については双方に責任があると述べた。

王毅外相は、外交官として長く日本に携わってきた知日派として有名である。日本語も流暢で、日本の事情にもよく通じている。日本に対し融和的な姿勢を見せると、中国国内から「親日」と批判される恐れがあり、日本に対し余計に強面で臨まざるを得ないという事情があるのだろう。

 王氏の個人的な事情以外に、中国政府に、日中関係改善がなかなか進まないことに対する苛立ちがあるのは事実である。日本政府が日中外相会談の打診をしたのは昨年末だが、4月末になってようやく実現した。1月に北朝鮮が核実験を強行した際、王外相は岸田外相の電話協議に「多忙」を口実に応じなかった。14年11月の安倍-習会談以降、中国は日中関係改善のためのシグナルを出しているのに、日本側の動きが鈍いという不満がある。もちろん、日本からすれば、中国が東シナ海や南シナ海で威圧的行動を続けているのが原因なのだが、双方の認識のずれは一向に縮まっていない。

中国が最近、日本に対して抱いている不満の一つは、4月に開催されたG7広島外相会合において、海洋安全保障に関する外相声明が出され、名指しこそしていないものの、中国の行動に対する懸念が明記されたことにある。王外相は会談で、日中関係を改善するための4つの要求として、「四つの政治文書」、「一つの中国」尊重などの従来の項目に加え、新たに「中国脅威論をまき散らさない」を提示した。G7首脳会合において、海洋問題が引き続き提起されるのを防ぎたい思惑もある。

「一つの中国」に関しては、台湾の蔡英文新政権の動向を中国は注視しており、日米と台湾の距離が接近するのを警戒している。中国は、蔡政権が台湾の独自性を強調するような政策を取るのではと懸念しているが、それを後押しするような政策を取らないようにと、日本に釘をさす必要を感じたのであろう。

歴史問題については、G7外相会合の開催地が広島であったことが、中国にとっては不服である。被爆地の広島は、「核のない世界」あるいは核不拡散問題の重要性を再確認するのにふさわしい場所であり、日米の関係強化にもつながるが、多くの中国人は、日本が「被害者」という立場を強調することにより、加害者としての色彩を薄めようとしているという疑いをもっている。

以上のような互いの不満があるにもかかわらず、日本にも中国にも、協力を断絶するわけにはいかない事情がある。2012年以降の政治・経済関係の冷却化は、双方の経済にマイナスをもたらすことを改めて証明した。日中ともに経済の先行きに対する不安感が増している中、主張の相違にばかり拘泥しているわけにはいかないのである。王外相は、3月に「安倍政権の二面性が日中関係を阻害している」「中国を敵とみるか友人とみるか」と発言したが、外交のプロである王氏らしからぬ発言で、外交がそのように単純なものでないことは、王外相自身もよく理解しているはずである。

経済以外にも、日中の協力が必要な分野はある。一つは北朝鮮の核問題で、北朝鮮は国際社会からの要請を無視して核開発を進めてきており、状況は徐々に悪化している。北朝鮮問題解決のためにも日中の協力は不可欠である。

 日本はG7の議長国として、また標榜する「積極的平和主義」のためにも、中国とただ対立しているだけでは、国際社会において、責任ある態度を維持しているとはみなされない。今年は日本で日中韓首脳会談が開催される予定で、9月には中国でG20(20か国・地域首脳会合)も開催される。日本側は日中首脳会談を実現し、日中間のハイレベル交流を継続したい考えである。中国も、経済の安定、そのために必要な周辺環境の安定のためにも、日本との関係改善を望んでいる。

それでも、中国が南シナ海や東シナ海における現在の政策を変更しない限り、日中間の不信が取り除かれることはない。中国が近い将来に、海洋における主張・政策を変更する見込みは薄いので、日中関係は、まだ当分のあいだ「改善の動きはあるが、脆弱」という状況が続く。そして残念なことに、この予想は良い方向に外れるより、悪い方向に外れる可能性(要因)の方が大きいのである。

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