示された解放軍改革案:党への忠誠と専門家の相克

 10月24日から26日、中央軍事委員会改革工作会議が北京で開催された。習近平国家主席は、「強軍戦略を全面的に実施し、中国の特色ある強軍の道を堅実に歩む」と強調した。すでに進められてきている、陸軍から海軍・空軍により比重を移す動きを加速し、統合作戦指揮機能を強化するため、現在の七軍区制を見直すなど、大規模な軍改革の方針が示された。2020年までに改革の成果を出すとし、

2017年には、9月の軍事パレードの演説で示した通り、軍人を現在の230万から200万へと削減する方針も確認された。また、軍が行っている営利活動(文芸、建設、教育など)も止めるべきとされた。

 習近平はかねてより軍に対し、「戦い勝つことができる強い軍隊」を建設することを求めてきたが、

軍の現代化、プロフェッショナル化を推し進める上で制約となるのが、中国独自の党と軍の関係や、軍における腐敗である。

 人民解放軍の汚職について知らない者はいないほどだが、そもそも軍が営利活動を行うことを認めたのは鄧小平であった。鄧はまず経済成長を優先するため、軍に十分な予算を割り当てず、不足した国防費を補うため、軍が自ら営利活動を行うことを認めた。鄧は400万人いた解放軍を230万に削減するという大鉈を振るいもしたので、その不満の埋め合わせという側面もあったかもしれない。

 軍の営利活動は、生産活動、工場の運営、資源開発、不動産などあらゆる範囲に及び、次第にその腐敗が問題として指摘されるようになった。江沢民の時代には、軍の営利活動は禁じられることになったが、実際には軍の営利活動はその後も続けられた。政策決定の不透明さに加え、軍からの支持を獲得するため、指導者らが取り締まりを徹底しなかったせいでもある。今回、習近平が大規模な軍改革を提示したのは、軍内部における習の権力掌握が進んだことを意味している。

 軍の「現代化」は、50年前から掲げられているスローガンである。その時々の国力や技術水準、軍事力のあり方によって、具体的な政策目標は変わってきたが、変わらないのは、人民解放軍は党の軍隊であり、国家の軍隊ではないという原則である。あえて日本を例として置き換えると、自衛隊の最重要任務が、国民・国家を守ることではなく、自民党を守ることだというに等しい。解放軍内部では、軍の党に対する忠誠心を養うための教育が強化されているが、海外に留学し、研修を受けたような若いエリート将校の中には、人民解放軍も普通の軍隊になるべきという考えを持つ者も出てきているという。共産党のプロパガンダが、軍として合理的な政策を計画・実施する妨げとなりうる可能性を懸念する声や、軍は党ではなく国家に忠誠心を持つべきという意見は、決して表立って語られることはないが、党指導者や軍長老からは危険思想とみなされている。

 「政権は銃口から生まれる」という毛沢東の言葉は、現在の共産党指導者にとっても重みを持つ言葉である。共産党指導者が統治における最終的な権力の拠り所とし、かつ、もっとも恐れを抱いているのは軍である。2017年までに削減される30万人は、ほとんどが非戦闘要員である。彼らの排除は、反腐敗対策の一環であると同時に、軍の専門家とも関連しているように思われる。軍の規律を引き締め、党の意思を貫徹させるという任務は、強化される規律委員会に引き継がれる。

 軍の専門家と規律に関していえば、軍の統制に関しても、党指導部には懸念があるのではと推測される。人民解放軍が、習近平の指示にあからさまに背く行動をとることはない。しかし、指導者らの指示は、大体が大まかで、細かい行動規則に指示を与えるような内容ではない。指導者の方針を独自に解釈した現場の軍艦船や戦闘機が、危険な挑発行動をとって一触即発の事態を引き起こしたり、対中警戒感を引き起こしたりすることは、党指導部も望まないだろう。

 軍としてプロジェッショナルでありながら、党や指導者に対して忠誠を尽くす解放軍が習近平の目標である。しかし、果たしてうまくいくだろうか。シビリアン・コントロールは、いかなる国においても重要な課題だが、中国のように、指導者が国民によって選ばれたわけでない国において、もし党と国民の意思が乖離したとき、軍はどう行動すべきかというのは、常に根本につきまとう問題だからである。

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