厳しさ増す米中関係:習近平の訪米、成果乏しく

 今年2月、習近平国家主席が9月に訪米することが公表されてから、両国政府、特に中国側は、習訪米を成功させるべく準備を進めてきた。習近平の訪米と、ローマ法王の訪米時期が重なり、習訪米のニュースが霞んでしまうことを心配した中国側は、ローマ法王の日程を変更するようアメリカに要請したという(読売、9月21日)。その要請は受け入れられなかったが、結果から見ると、むしろそれで良かったのではというくらい、成果の乏しい首脳会談となった。また、中国側が求めていたとされる習近平の米国議会での演説も実現しなかった。

習近平が国家主席となってから訪米するのは、2013年6月に続いて二度目だが、今回は国事訪問(国賓待遇)であったにもかかわらず、米中共同声明の発表もないという異例さであった。前回の会談では、具体的な成果はさほど無かったものの、両首脳がノーネクタイで計8時間も会談を行い、米中の良好な関係をアピールしようという雰囲気がまだあった。今回アメリカは、外交上の礼を失するような対応はもちろん取らなかったが、2年前に比べて明らかに冷淡で、米中「協力」より「不一致」の側面が目立った。

 今回の会談の成果がさほど期待できないことは、事前に大方が予想していたことである。オバマが2008年に大統領に就任したときから、ワシントンの政策担当者らの対中観は大きく変わった。中国を敵として扱わず、重要なパートナーとして扱い、協力を深めていけば、責任ある大国となっていくのではという期待は、中国自身の周辺領域における行動、南シナ海における埋め立て(砂の“万里の長城”の建設)、中国戦闘機や艦船による米哨戒機・艦船に対する危険な挑発行為、米企業などに対するサイバー攻撃、人権活動家に対する抑圧などによって損なわれた。ホワイトハウスだけでなく、議会や大統領選の候補を狙う政治家らも、対中批判を強めるようになっている。

 ただ、米国が最も重視していたサイバーセキュリティの問題では、一定の成果があった。これまで中国は、サイバー攻撃について非難されても、「中国も被害者である」という主張を繰り返すだけだったが、今回は、両国の政府がサイバー攻撃による企業秘密などの窃取を実行あるいは支援しないこと、また、閣僚級の対話メカニズムを創設することに合意した。アメリカ側が、サイバー攻撃を行っている中国企業に対する制裁をちらつかせ(朝日、9月28日)、強い態度で臨んだことが功を奏したようである。とはいえ、実際に中国がこの合意を守るかは不明である。もしサイバー攻撃を続けるなら、制裁発動もあり得ると米国は警告している。おそらく、中国がサイバー攻撃を止めることはないので、アメリカが実際に制裁を発動するのかを含め、この問題は、今後も米中間の重大な問題の一つであり続けるだろう。

 南シナ海や台湾問題、人権問題については、双方が従来の主張を繰り返し、平行線をたどった。信頼醸成・危機管理について、両国の軍用機の偶発的な衝突を防止するための行動規範と、危機が発生した際の相互通報制度の具体化を続けることが合意された点は、成果といえば成果だが、サイバー問題と同様、どれだけ実効性のあるものとなるかが注目される。

 その他、公開はされていないが、習近平からは、米国に逃亡した中国の汚職官僚や企業家、特に、失脚した令計画・元党中央弁公庁主任の弟で、習近平らにとって都合の悪い情報を大量に持ち出したと言われている令完成などの引き渡しについて、協力を要請したのではと噂されている。中国の公安が米国に潜入し、逃亡した中国人を連れ戻す「キツネ狩り」について、アメリカ政府は抗議を表明しているが、習近平とオバマの間でどのような会話がなされたのかは、現在のところ知る由もない。

 首脳会談の成果は乏しかったが、両国とも完全な対立を望んでいるわけではなく、特に経済では切っても切れない関係にあるのは言うまでもない。習近平は、ボーイング社から航空機300機を購入すると発表し(ちなみに、2011年に胡錦濤が訪米したときには200機購入した)、首脳会談に先駆けてシアトルで開催した「米中ビジネスラウンドテーブル」には、マイクロソフト、アマゾン、アップルなど大企業のCEOらが集まった。中国経済の影響力の大きさが改めて示されたが、そのことが、既述の米中間摩擦を解決するのに役立つかといえば、あまり効果はないだろう。もともと米中関係を重視する人々は、米中は協力を深めるべきだという考えをさらに強めることになっただろうが、中国に対する懸念を強く持つ人々にとっては、あまり効果的でなく、むしろ反感を煽る作用もあったであろうからである。さらに、来年の大統領選に向け、外交問題はあまり争点にならないとはいえ、共和党・民主党双方の候補者らの対中姿勢は厳しいものとなることが予想される。少なくとも、新しいアメリカ大統領の外交方針が示されるまで、米中関係が大幅に改善されることはないだろう

前のページに戻る